多機能型事業所あすかの生活訓練では4月22日(月)に「句会」を開催し、体験入所の方を含めた利用者と職員が俳句を楽しみました。
事前にお題を「桜(または花)」と指定し募ったところ、全13句がエントリーしました。
「句会」では、前回と同様に作者名を伏せた状態で、参加者全員が、自分が良いと思う句を2句選び、得点の高い順から発表しました。発表の段階で作者は手をあげます。その後、お互いに句についての批評を述べ合い、最後に作者の思いを発表するという形をとりました。
自分の思ってもいないような意見が出されたり、俳句に込めた作者の思いを聞いたりすることで、句の解釈が深まりお互いの思いを共有することができました。「作者の意見を聞いてから、句を選びたかった」という声が出たように、「座の文芸」としての俳句の面白さを感じることができた「句会」だったと思います。
桜舞い夜桜きれい夜の道
「夜桜の美しさが素直に表現されている」と、堂々の一位でした。「桜」や「夜」のリフレインが韻を踏んでいる短歌的な調べをもった作品です。
つかめないアビシニアンの毛のすべり
「毛がすべるところに春らしさがでている」と高評価。作者の実体験だそうです。「つかめない」というのは、毛がすべるためだけでなく、猫の実体がなかなかつかめないという意味にも思われます。
春の梅花ほころぶほととぎす
は行がたくさん使われていることや「ほころぶ」という表現によって、梅のやわらかさが伝わってくるようです。「ほっこりする」という声が出ました。
天の空春の咲く花あざやかに
「天の空」は、昔の言葉では「天つ空」。天という意味だけでなく、遠いところ、手の届かないところといった意味もあります。作者は、天国でも楽しく、春の花を思い出してほしいという願いを込めて詠みました。
昼過ぎの花見団子のやはらかさ
やわらかさは花見団子の一番の特徴。「昼過ぎ」という時間に、花見の場の活気とともに気だるさも出ているようです。
つらつらと昔を憶ふ花の色
花の色は淡い。昔の思い出も、花の色のように淡くはかないのでしょうか。松尾芭蕉の「さまざまの事おもひ出す桜かな」を彷彿とさせます。「万葉集を思い起こさせる」という声もありました。
春なのね桜満開友だより
この句は作者の実体験から生まれました。こちらはまだ水仙がつぼみの時期に、東京の知人から桜が満開だというメールが届いたそうです。その驚きが「春なのね」と表現されています。
傘ふくにお供えをして感謝する
「傘ふく」とは、酒田地方に伝わる飾り雛のこと。「傘ふく」と表現したことで、地域性を感じることができます。作者は友人に傘ふくをプレゼントしてもらい、今年初めて飾ったそうです。
りりしくもりんとして咲く白い花
「り」の繰り返しが調べをつくっています。ここでの「白い花」とは桜ではなく、CDのジャケットにあった花を詠んだとのことです。
桜の花読書の春を飾りつける
「読書の秋」とは言っても「読書の春」とは言わない。ここに作者の工夫があります。「春」はすべてがスタートする時期。桜を飾りつけることで、新たなスタートしたいという気持ちが表れています。
毒を持つ水仙の花咲き乱れ
「毒を持つ」という表現が強烈です。しかも、ただ「咲く」のではなく「咲き乱れる」というところに、ある種の怖さがあります。
開花する花より男子桜花
「桜花」と結ぶところが粋だ、という感想があがりました。大変素直に自分の気持ちが表現されています。「男子」を「だんご」と読むのは、漫画からとったものです。
桜の木ピンクの色はあざやかだ
桜は、開花するとあっという間に盛りになります。「あざやかだ」というところに、作者の桜を見たときの驚きが表現されています。
大いに盛り上がった「句会」でした。今月で生活訓練からB型に移行する人もおり、この「句会」がはなむけにもなりました。
次回は、夏に予定しています。
Comments are closed